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日本及び米国での特許取得に関する一般的な情報
I. 特許出願できる者
日本では、発明者若しくは発明者
から「特許を受ける権利」を譲り受けた者(譲受人)が出願人となることができます。日本では、譲受人は、発明者
が勤務する企業であることが一般的です。個人の権利を重視する米国では、発明者のみが出願人になれ、特許が取得できた後に権利を企業に譲渡することになっています。
日本の場合には、譲渡証は、審査官が要求した場合にのみ提出すれば良いことになっています。一般に、発明者の住所が、出願人と同じになっている場合には、譲渡証の提出が要求されることはありません。
米国の場合には、譲渡証を提出する必要があります。出願時に用意できる場合には、出願と同時に提出することがコスト低減上有効
でしょう。
II. 権利の所属
日本には、企業の従業者がした発明の取り扱いについて、米国にはない特許の規定があります。
日本特許法35条は以下の様に規定しています。すなわち、従業者が職務上した発明について企業が出願人になって特許取得するには、
従業者に通常支払う給料の他に、正当な対価を支払う必要があります。当たり前といえますが、従業者の立場が極めて弱い日本で、従業者
の権利を守るために設けられた規定です。後々、従業者がこの規定を盾にとって、出願若
しくは権利の無効を主張することもできますので、注意が必要です。
一方で、従業者が職務上した発明について自ら特許を取得した場合には、雇用者である企業は、その特許について無償の通常実施権
を有することになっています。すなわち、従業者が、その企業に属している間にした発明を、その企業を辞めた後に自ら出願した場合でも、企業はその発明を無償で実施することができることになります。
III. 代理人
日本に住所を有する者が特許出願等を行う場合には、一般に、専門家である弁理士を代理人に立てて行うことが賢明であると思われます。
米国に出願する場合には、両国の法制度に明るい日本の弁理士に仲介依頼することが有効でしょう。日本の弁理士に仲介を依頼した場合には、邦文の原稿も作成しますので、依頼者は日本語で校閲を行うことができる利点があります。また、出願後
の手続においては、米国の代理人とコミニュケーションをとる必要がありますが、ここでも日本の弁理士が間に入りますので問題はありません。
一方、特許法8条は、日本に住所を有しない者が、日本で特許出願をするためには、日本に住所を有する特許管理人を置く必要があると定めています。この特許管理人も、弁理士であることが一般的です。
ただし、2000年6月に採択された特許法条約(Patent Law Treaty)では、外国からの出願であっても
出願時には代理人を強制することができないことになりました。したがって、日本の特許法8条は2~3年中に削除されることになります。日本特許庁は電子出願システムを採用していますので、この結果、世界中のどこからでも日本にいる弁理士を通さずに出願ができるものと予想されされます。
IV. 出願手続
1.
電子出願
日本では、1990年から電子出願制度を採用しており、2000年からは、PCT出願の国内移行手続や商標出願、意匠出願もパソコンを使ってオンラインでできるようになりました。オンライン出願は、現在ISDN回線を通して日本の特許事務所と特許庁を直接接続することによって行われていますが、先にも述べたように、近い将来、インターネット経由になることになっています。
電子出願以外は、特許庁に高い手数料を支払う必要があることから、現在約90%の出願がオンライン出願になっています。
弁理士の事務所には、このオンライン出願に必要なシステムが全て揃えられていますから、出願人がこの点を心配
する必要はないでしょう。
2.
優先権
日本及び米国は、パリ条約及びWTOのメンバーなので、日本若
しくは米国で出された国内出願若しくは国際出願に対してパリ条約の優先権を主張して米国若しくは日本に出願することができます。優先権を主張できる期間は1年間です。
現在、米国・日本間の出願は、ほとんどがこのパリ条約の優先権を伴うものと、次のPCT出願の国内移行です。
どちらにしても、国際的に出願する時に最も重要なことは、国によって要件が大きく異なること、及び英語と日本語がかなり異なる言語であるということを認識することです。英語と日本語は、通常の日本人や米国人が考えている以上に大きく異なります。
また、特許明細書の書き方は特殊であり、翻訳者には通常の日本人/米国人以上の日本語/英語能力が求められます。単なる翻訳はとても読めたものではなく、それだけで拒絶されることもあります。
このため、外国出願用の明細書は、弁理士若しくは特許の知識を持った技術者が、これらの事情をよく理解
した上で用意する必要があるのです。
我々は、特に日米間の出願において良い明細書が用意できるのであれば、出願時に費用を費やしても権利取得までの費用は結果的に節約できると考えています。このため、我々は以下の手段によって出願人とのコミニュケーションを図ろうとしています。
第1に、米国の日系法律事務所との強固かつ柔軟な協力関係により、言葉
のコミニュケーション障害及び時差(営業時間の調整により行います)の問題を解決する。第2に、日米間に設置された電話会議及びテレビ会議システムによって距離の問題を解決する。第3に、重要な発明の場合
、出願を担当する米国特許弁護士が会社訪問及び工場見学を行うことによって発明を理解する。
3.
PCT国内移行手続
日本及
び外国への特許出願は特許協力条約の下、国際出願という形によっても行えます。この国際出願は、費用的に高く権利取得まで時間がかかるという欠点もありますが、出願する国が多い場合
には有効です。日本の出願人は、日本語の明細書を日本の特許庁に提出するだけで、世界各国の締約国に同時に出願したのと同じ効果をえることができます。各国で権利を取得するには、その後、国内移行手続をとる必要があります。
PCTの国内移行手続は、PCTの第2章に規定する国際予備審査が19ヶ月以内に請求された場合には30ヶ月以内
、請求されかった場合には19ヶ月以内に行わなければなりません。具体的には、PCT国際出願のクレーム、明細書及
び図面中の文言及び要約の翻訳文を上記期間内に各国特許庁に提出する必要があります。
なお、PCTでは国内へ移行する前に、一括的に補正を行えるメリットがあります。ただし、この補正を各国で有効にするには翻訳文の提出が必要になります。
4.
英語・日本語出願
日本への特許出願は英語でもでき、米国への出願は日本語でもできます。ただし、出願の日から所定の期間内に英語若しくは日本語の翻訳文を各国特許庁へ提出しなければなりません。
しかし、この英語・日本語出願は、PCTの国内移行には適用されないことに留意する必要があります。すなわち、日程的に余裕がない場合、パリ優先のときには、英語のまま出願できますが、PCTでは無理であるので注意する必要があります。
この英語・日本語出願によれば、オリジナル言語のテキストに基いて後で補正が行えます。このため、日本人はともかく、多くのアメリカ人は、翻訳ミスがあったときに備えて英語出願の方が良いと考える傾向にあります。
しかし、一般に、日本の弁理士は英語出願を奨励していません。英語出願の場合、翻訳ミスが無効理由
になっているからです。また、日本語と英語の違いを考えると、正確な翻訳を実現するのは不可能に近い話であるし、権利を無効にしようとするものはどのような些細なミスでも、それを翻訳ミスとして掲げて無効を主張すると予想されるからです。また、その争いに無用に時間がかかることになります。
V. 審査
1.
出願公開
日本にした出願は、優先日から18ヶ月経過後、審査とは無関係に公開されます。出願公開された明細書は以後、先行技術(prior
art)となります。PCT出願については、18ヶ月で国際公開されていますが、日本語の翻訳文が日本国内で公開されます。米国でも最近の法改正により、一部を除き18ヶ月後に出願公開されることになっています。
2.
審査請求
日本では出願から3年以内(2000年10月に"7年以内"から改正)に審査請求を行わなければ、出願は審査されません。ベンチャー企業及び外国のクライアントから最も多い質問が、この出願審査請求をいつ行うべきかというものです。
日本の企業は、例えば、1年、3年、5年、6年(7年の場合)というポイントで、主に、その発明が製品化されるかどうかという観点から出願審査請求をするべきかを判断します。よっぽど急いでいるもの以外、出願時には行わず、出願公開の後に行うのが一般的でしょう。出願公開されるだけで、ライバルをけん制できるという効果が期待できるため、実施しない発明については、コスト低減の観点から審査請求しないことも多いようです。
なお、米国出願がある場合、米国では審査請求制度がなく、また、米国での審査は非常に早いので、米国出願が許可された後で日本の審査請求を行っても遅くはないと思われる場合もあります。なお、日本においては、特許庁に支払う出願料は21000円と安いのですが、出願審査料は通常100000円以上と比較的高価であり、請求項の数が多くなるとこれに比例した追加料金が発生します。
出願審査請求がなされたならば、この請求がされた順に出願が審査されることになりますが、審査には通常1~2年はかかります。ただし、急ぐ場合には、早期審査を請求することができ、この早期審査の要件は米国の制度と略同じです。
3.
特許要件
主要な特許要件は、日米で略同じと考えて不都合はありません。なお、最近話題になっているビジネスメソッド特許及び遺伝子特許のクレームの形式は、一般に米国よりも厳しいとされています。しかし、日本の弁理士はこの点を考慮して日本語明細書の作成及び日本語への翻訳を行います。
具体的な、拒絶理由は、産業上利用できる発明であるか(
Patentable subject matter)
、新規性( Novelty) 、進歩性(
Inventive step)が最も重要であり、米国と略同様です。
しかしながら、新規性喪失の例外規定(グレースピリオド)に関しては、米国と異なるので注意する必要があります。日本では、自己の出願前に、自分の発明を学会や刊行物上に発表してしまうと、その発表の日から6月以内に日本に出願しなければ、自分の発表事実が障害となって権利を取得することができません。これは、他の国でなされた発表の場合であっても同じで、米国出願が存在するかは関係ありません。
米国では先発明主義ですので、基本的に自己の発明に基いて拒絶されるという考え方はありません。ただし、先発明主義の下でも出願がいつまでも先送りされることは良くありませんので、これを規制する観点から、刊行物に発表した場合にはそれから1年以内に出願する必要があります。
また、発表が学会発表でもなく、刊行物への発表でもない、単なる実施の場合には、上記例外は適用されず、それらを行った時点で新規性を失って日本で権利を取得することはできません。
なお、上で米国は、先発明主義を採用していると説明しましたが、米国においても、通常の審査は出願時を基準としてなされ、発明時を基準とするのは特殊な場合だけですので、審査実務には大きな違いはないと思われます。
4.
拒絶
日本の拒絶理由で特徴的なのは、米国や他国の審査官が書く拒絶理由に比較して、その記載が非常に短いということです。
このため、日本では審査官の意見に関わらず、自発的に、引例と発明との違いを分析する必要があります。そのときの分析が適切であり、かつ、請求の範囲が適当に限定されていれば、許可される可能性が高いと思われます。
また、審査官の意図を聞くために、ここで、インタビューを行うこともできます。通常このインタビューの申し込みは、1回は許可されます。特に、高度な発明の場合には有効でしょう。I
米国では、審査官の拒絶理由は概ね長く、焦点も絞られているので、それに対して応答する方法が有効です。拒絶は、ファーストアクション(1回目の拒絶)とファイナルアクション(最終拒絶)があり、必ず、1回目がダメでも再度審査官とコミニュケーションするチャンスが与えられます。また、ファイナルアクションに対する応答が不適切な場合、審査官からアドバイザリーアクションを受け取ることによってその理由を知ることができます。
一方、日本でも同じく1回目の拒絶と最後の拒絶がありますが、日本では米国と異なり、1回以上同じ理由の拒絶理由が発せられることはなく、1回目のチャレンジでダメな場合には即拒絶査定という最終処分になってしまいますので注意が必要です。また、アドバイザリーアクションというものがありませんので、応答が不適切な場合、出願人は拒絶査定という最終処分によってそのことを知る事になります。
5.
補正
明細書の補正は、日本では1回目の拒絶理由通知に対する応答期間が満了するまでは、自由に行うことができます。補正は、明細書に新規事項を追加しない限り自由に行えます。それ以後は、厳しく制限されます。米国においても同様です。
なお、米国出願が許可された後に、日本出願のクレームを米国許可クレームと同一になるように補正することも可能です。
6.
出願変更
実用新案登録出願は、無審査で登録されます。
このため、特許出願が最終的に拒絶になりそうになったときに、その出願を実用新案出願に変更すれば、一応権利を確保することができます。その出願がとても重要で、とにかく権利が欲しい場合にこの方法は有効です。
実用新案登録出願は、出願から約6月で登録されます。
無審査なので、実用新案権の行使は一般に困難でありますが、権利行使を予定しないのであれば問題は少ないと思われます。ただし、出願変更できる期間は限られているので注意が必要です。
VI. 拒絶査定不服審判
日本では、審査官
の最終的な拒絶査定に対して、所定期間内に審判を起こすことができます。
なお、米国には、この拒絶査定というものがありません。米国ではファイナルアクションの応答期間中
に特許にできない場合にはその出願は放棄されたものとされます。ただし、放棄と見なされる前に、継続出願
というものをすることによって審査手続をリセットすることができます。
したがって、無理矢理対応
させれば、日本の拒絶査定は、米国ではファイナルアクション後のアドバイザリーアクションに相当するということもできます。そして、審判は、アドバイザリー後の補正か若しくは継続出願に相当するものであると考えるべきでしょう。
すなわち、拒絶査定に対して、審判請求時から所定期間内に補正をした場合には、その出願は、同じ審査官
によって再度審査され、特許可能かが判断されます。この補正は、このとき、クレームを拡張しない範囲で行えます。
しかし、審査時と同じ補正をしても、審査官は許可しないでしょう。この場合
には、その出願は、三人の審判官からなる合議によって慎重に審理されることになります。この結果、審査とは異なった結果が得られることも多いのです。
VII. 異議申立
日本においては、重要な特許には、必ずといっていいほど異議がかかります。異議申立は、特許の内容が公開された後、6ヶ月以内に行えば良いとされています。
異議がなされた後、異議に理由があると審判官が判断した場合には、取消理由の通知がなされます。この取消理由の通知は、通常、異議申立て可能期間が経過した後4月以内になされます。
したがって、自分の特許に異議がかかった場合、異議申立て期間経過後5月ぐらいで何の連絡
もなければ、特許が維持される可能性が高いといえるでしょう。なお、統計によれば、異議申立
てによって特許が取り消される確率は、全異議申立て件数に対して25%程度とかなり低いのが現状です。
米国には、異議の制度はなく、これに対応する制度として、出願人以外のものが申し立てる再審査請求があるだけです。
VIII. 特許の存続期間
特許の存続期間は、米国、日本とも出願の日から20年です。ただし、医薬品等のように、日本の官庁への許認可申請のため実質上特許の使用ができなかった場合には、一定の条件の下、申請により存続期間の延長が認められます。
IX. 無効審判
日本では、特許を取り消すための手段が2つあります。1つは前述した異議申立てであり、もう1つは無効審判です。
異議申立てと無効審判の違いは、その目的にあります。異議申立ては審査ミスの是正であり、公益的側面
を有する。したがって、異議申立ては特許後一定の期間であれば誰でも行え、しかもその審理中、異議申立て者と特許権者とが議論する機会は与えられず、審理は高速です。
これに対して無効審判は私益的な性格を有します。無効審判は、通常、特許侵害であるとされた第三者がその対抗手段として使用する制度である。この無効審判では、無効審判の請求人と
特許権者が議論する機会が与えられ、その議論の結果に基いて審判官が判断します。この無効審判の決着には、通常5年程度
かかります。
なお、米国には、これに対応する制度として、出願人以外の者が申し立てる再審査請求があります。また、権利の有効性は侵害裁判中でも争われます。
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